どうやら永遠はないらしい

どうやら永遠はないらしい。

 

 

 

V6が解散するらしい。

 

 

らしいという言い方は適切ではない。解散するのだ。でもまだ実感がわかないので「どうやらそうらしい」と言いたくなる。

 

 

どうやらV6は解散するらしい。私が世界で一番信頼している人たちはそういう決断をしたらしい。

 

 

全く受け入れられないが、この気持ちを忘れたくはない。私がV6を好きになってからもう何年も経っていて、好きになった当初の気持ちや当時の出来事は忘れてしまった。しかし、これからのことは忘れたくない。どれだけ悲しくて辛くてももうこれ以上彼らに関することを忘れたくない。だからこの文章を書くことにした。

 

 

私がV6を好きになったのは中学生の頃だった。その頃、小説『永遠のゼロ』を読んだ私はそれが実写化することを知った。その主演が岡田准一さんだった。当時の私はジャニーズはもとより芸能界に対する関心が薄かったので、いまいち岡田くんのこともよく知らなかった。「岡田くんってどんな人だっけ」と調べ始め、彼がV6であるということを知った。その後調べていくにつれ、なぜかそのままV6のことが好きになってしまった。ちょうど発売された『君が思い出す僕は君を愛しているだろうか』を購入し、繰り返し聞いた。

 

 

それから私はものすごく多くの初めてを経験した。初めてテレビ誌を買った。ジャニーズショップにも行った。覚えたてのSNSでV6ファンの友達を作った。どれもこれも新鮮で楽しかった。V6のおかげで生活が一変した。

 

 

やがて高校生になり、ハマりたての勢いは少し落ち着いた。他に好きなものができたり学校のことが忙しかったりでV6にさほど力を注がなくなった。しばらくして大学受験に集中するためにツイッターのV6関係のアカウントを消した。そうしてさらにV6の情報が入らなくなった。無事に大学生になった。サークル、バイト、新しい推し。ますます興味のあるものが増えた。

 

 

それでもずっとV6が好きだった。好きでいられた。

 

 

私がいくら変わろうと、V6は変わらず6人でいてくれた。他に好きになった何かでどんなことがあっても私にはV6がいる。そう信じていた。実家のような安心感とはよく言ったものだ。

 

 

2017年には担当である岡田くんが結婚した。そのことには大してショックは受けなかった。彼は家庭を持つことに対して憧れを抱いていたようだったので「夢が叶ってよかったな」と思った。他のメンバーも結婚したりお子さんが生まれたり、色々と変化が多かった。

 

それでもずっと好きだった。V6が、岡田くんが。何があってもずっと好きでいられてうれしい反面、「私はファンじゃないのかも」なんて思ったりもした。ファンクラブにはずっと入っているし、新譜は全形態買うし、ライブにはもちろんいく。でも他に応援している俳優やはまっている漫画もある。掛け持ちしまくりだ。熱心なV6ファンでは決してなかった。それでもいいと思った。V6はそんな応援の仕方を否定したりしない。自分のペースで応援することが重荷にならないところも好きだった。

 

 

他にどんな推しができようと一番信頼しているのはV6だ。これは一生変わらないのだろうとぼんやり思っていた。

 

 

そんな気持ちで迎えた25周年。感染症の流行で3年間待っていたライブは配信になった。そのライブで私は泣いた。大泣きした。メンバーのほとんど40代、ライブなんて何回もやってきている。それなのにこれまでのどのライブより新鮮でかっこよくて美しかった。涙が溢れて止まらなかった。私が何年もすがってきたグループはこんなに素晴らしいのだと近所中走り回って伝えたかった。このライブで披露した曲の中に『full circle』という曲がある。その歌詞に「後悔はない」というフレーズがある。それを聞いてまた泣いた。25年間たくさんのことがあったと思う。その歴史の半分も見ていない私にはわからないことが。それでも「後悔はない」と歌ってくれることが嬉しかった。「ただの歌詞だろ」と言われればそうなのだが、好きな人の口から出る言葉は全て真実に聞こえるのだから仕方ない。私は世界で一番信頼しているV6の「後悔はない」の言葉を胸に刻んだ。

 

 

そして今日解散の知らせが届いた。私はその時出かけていて友人からの電話で「解散の報道が出ている」と知った。 V6は何度も解散説が出ていたグループだ。V6でサジェストすれば解散の言葉が出てくる。それでも解散せずにここまできたのだ。「どうせデマかもしれないよ。また何か動きがあったら連絡するね」そう言って電話を切った。しかしメールボックスにはFCからの大切なお知らせが届いていた。私はそれを開けなかった。心臓がやけにうるさくて、手が震えてどうにもできなかった。恐る恐るツイッターを開く。トレンドにはV6の名前と解散の文字が踊っている。「トレンドにV6が入るなんて」と驚いた。そしてどうやら解散するらしいと知った。

 

 

涙は出なかった。全く信じられなかったからかもしれない。妙に冷静だった。そのままぼんやりと用事を済ませ、夕飯を食べ、家に帰り、風呂に入った。それからパソコンを開いた。発表から6時間が経っていた。まだ涙は出なかった。ジャニーズネットにアクセスする。V6からのお知らせが画面に表示される。

 

 

気がついたら泣いていた。キーボードがビシャビシャに濡れていた。ようやく解散するという話が脳に伝わった。私はV6のことを世界で一番信頼している。なぜだか知らないがとにかく信頼している。その彼らが一生懸命に伝えてくれた。その話を信じないわけにはいかない。

 

 

V6は解散するらしい。その決定に決して後悔はないのだろう。長い時間をかけて話し合ってきた結果だという。仲違いしたのではなくそれぞれの人生を考えたからだという。信頼しているV6がそういうのだから信じる。他のどんな情報が出ようと私は彼らの言葉を信じる。だって世界で一番信頼してるから。

 

 

解散しないで、辛い、悲しい、受け入れられない。怒りたいし泣きたいし言いたいことはたくさんある。でも、そのどれも彼らに向けたくなかった。優しい彼らはそんなことを聞いたら絶対に悲しむ。その日が来るまで一緒に走りますとだけ伝えたい。

 

 

いい子でしょう。だって好きだからね。好きな人の前ではいい子ちゃんをしていたいものでしょう。

 

 

万物は流転する。物は壊れるし、人は死ぬ。この世界に永遠なんてない。全ては変化し続ける。当たり前の話なのに、V6にはそれが適用されないと思っていた。ずっとずっと6人でステージに立ち続けるのだと、そこにいてくれるのだと思っていた。永遠にV6はあり続けると盲目的に信じていた。

 

 

私はこの春大学を卒業して社会人になる。私の学生生活とともに、そのほとんどの根元にあったV6も終わりを迎える。

 

 

どうやら永遠はないらしい。それをまざまざと思い知った。それなのに私はまだ永遠を信じたがっている。解散しても何しても永遠にV6を好きでいると誓いたがっている。